山岳診療所・救護所とは

登山者を主な対象として、入山中の急な病気やケガなどに対応する施設で、多くはどこかの山小屋に隣接し、その山小屋と連携して活動しています。
何処も30年~80年以上の歴史を持ち、長くその診療所に通っている医師等も多いことから、病状に関することだけでなく、その後の山行予定に関しても相談に乗ってくれます。

山岳診療所・救護所の業務

診療

登山中の急な病気やケガに対する診断・治療がその業務の中心ですが、その診療業務をスムーズに行うためには、夏季限定の業務ではあるものの冬から春にかけての準備、薬剤や医療機材等の手配を行うことも大切な業務となっています。

健康相談

病気や怪我でなくとも、山行中に御自分の体調に不安を感じた方から、その先の行程について相談されることもあります。施設周囲の山道なら実際に何度も歩いていて、良く知っている医師等のスタッフも多く、気軽に相談に乗ってくれます。

健康教室

健康で安全な登山のために、登山者等を対象とした講習会等を行っている施設もあります。
登山者が山小屋に着いた後や夕食の後等の少し落ち着いた時間を利用しての活動です。

学術活動

高地という特殊な環境を利用して、健康や登山に関する種々の医学的なデータを収集し、それらを解析する研究活動も行っています。それらの研究結果は本学会の学術集会等で発表され、学会誌の誌面も彩っています。

教育

この診療活動には多くの医学生や看護学生も参加しています。時に診療補助者として医療の実際を目の当たりにすることは学生達に鮮烈な印象を与えるようです。
特に重症の方が来られた際に「自分は何ができるだろうか」と真剣に考え、その方々の下山までの過程を共に考えることは、大学病院等での実習では得られない体験となっています。

運営

運営の主体は各診療所や救護所により様々です。多くは大学等と連携し、その大学に勤務するあるいは大学出身者等で山好きの医師や看護師、そして医学生等が運営にあたっています。
ボランティア活動で、医師等も自身の夏季休暇等を利用して参加していることから、時に半日程度医師が不在になることもありますが、その際には、麓にいる医師と連絡を取る等の対応をしています。
また、そのような活動であるため運営費が潤沢にある施設はなく、診療活動とは別に募金を集め、薬剤や機材の購入に充てている所もあります。

診療所・救護所を受診される方へ

診療費

診療に対する費用は各診療所で異なっています。
診療所の内規で決めた計算法により請求する施設から、無償で診療している施設まであります。
診察に際して費用が不安な際は、各施設や隣接する山小屋にお問い合わせください。

搬送について

重症化した高山病や脚の骨折等の場合は、ヘリコプター等による搬送が必要になります。
搬送が必要であるか否かの判断は、その方の病状だけでなく、各診療所・救護所の地理的条件や天候、時刻等も関わってきます。隣接する山小屋や山岳警備隊等と連携してより安全で確実な方法を提案させていただくことになります。
なお、この搬送には時に高額の費用負担が発生することもありますので、山岳保険への加入をお勧めします。

各地の診療所と関連医療施設

 (ア) 北アルプス(立山連峰)
  ① 雷鳥沢    金沢大学
  ② 劔沢     金沢大学
  ③ 室堂     金沢大学
 (イ) 北アルプス(後立山連峰)
  ① 白馬     昭和大学
  ② 冷池     千葉大学
 (ウ) 北アルプス(常念山脈~上高地)
  ① 燕山荘    順天堂大学
  ② 常念     信州大学
  ③ 蝶が岳    名古屋市立大学
  ④ 徳沢     日本大学
  ⑤ 上高地    東京医科大学
 (エ) 北アルプス(槍穂連峰)
  ① 槍ヶ岳     慈恵大学
  ② 奥穂高岳   岐阜大学
  ③ 西穂高岳   東邦大学
  ④ 涸沢     東京大学
 (オ) 北アルプス(薬師・裏銀座)
  ① 太郎平    日本医科大学
  ② 三俣     岡山大学・香川大学
  ③ 双六     富山大学
 (カ) 南アルプス
  ① 北岳     昭和大学
 (キ) 富士山
  ① 吉田口8合目 山梨大学
  ② 吉田口7合目 千葉大学
  ③ 富士宮8合目 浜松医科大学
 (ク) 白山
  ① 白山室堂   金沢大学

診療実績 (2014年度アンケート調査より)

 (ア) 調査協力施設: 17施設
          (北アルプス15施設、南アルプス1施設、富士山1施設)
 (イ) 受診者総数 : 2125名
          (男性:1093名、女性:1030名)
          開設1日あたりの受診者数:平均3.0人  (高度と共に増加傾向)
 (ウ) 重症者搬送数: 16名
          心停止1名、意識不明3名、他
 (エ) 高山病発症者 : 497名
          受診者に占める高山病の割合は高度と共に増加
          富士山の高山病割合は他のほぼ同等高度の山より高い

今後の課題

それぞれの施設で、各施設の立地や運営形式に合わせて様々な工夫をしつつ運営していますが、医師不足は多くの施設で共通の悩みとなっています。 そのような施設では、山が好きで、山岳診療に興味があり、それぞれの施設の運営方針を理解していただけ、同時に山荘従業員や警備隊等の方々と良好な関係を持っていただける医師を求めています。

山岳診療委員会

日本登山医学会山岳診療委員会では、各施設間での連絡を密に取り、診療面や運営面での情報交換を行うことで、各々の診療所・救護所がスムーズに運営され、登山者の安全に寄与できるよう活動しています。

山岳診療所ライブラリー

各写真をクリックすると、大きく表示されます。
<北アルプス(後立山連峰)・白馬>   <北アルプス(槍穂連峰) ・涸沢>

<北アルプス(薬師・裏銀座)・三俣>

<北アルプス(薬師・裏銀座)・双六>

<富士山・吉田口八合目>