| ★ 対象者 |
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2006年10月に「登山者検診ネットワーク」の試験的運用が開始されて一年余りが経過しました。 この間に検診を受けた登山者の数は309人で、男女ともほぼ同じ、平均年齢は男性がやや高く63.1歳、女性の平均は58.9歳でした。 |
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| ★ 参加中止を勧告された人はおよそ3.6% |
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検診の結果、参加中止を勧告された人は11人、およそ3.6%でした。もう少し詳しく言うと、 (1)医療が必要であるから中止を勧告されて中止した人は5人、 (2)要注意で経過により中止が望ましいと診断された人が4人、 (3)検診の時点では異常所見があったが経過中改善して参加許可となった人が2人、 (4)検診では特別な異常を認めなかったが高所で肺水腫を発症した人、 (5)検診で異常を認めなかったがその一年以内に高所で死亡した人 に分けられます。 | |||
| ★ (1)医療が必要であるから中止を勧告されて中止した人 |
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要医療、中止となった5人のかたは以下の通りです。 ● 71歳男 高血圧と高コレステロール血症があって服薬中であるが、血圧が丁度良い高さまで下がっていない。心臓が大きく、心エコー図検査でも左心室の壁が厚くなっている。 このようにコレステロールが高く、高血圧が長年続いて心肥大をきたしている人は脳や心臓の血管の動脈硬化が起こりやすいので、きちんと下げておかなければいけません。 ということで、血圧が安定するまでは心身ともにストレスがかかる登山は中止したほうがよいとの判断でした。 ● 60歳男 不整脈。全く規則性のない強弱もさまざまな脈で、心電図上「心房細動」という診断名がついています。 これがいつから続いているかわからないのですが、だいぶ前からであれば慣れてしまい自覚症状として感じなくなる場合が多いので、気になっていなかったのでしょう。 脈が不規則の場合、心臓の中に血栓が出来やすく、それが心臓を出て脳のほうに運ばれて脳の血管につまってしまうという心配もあります。高所では血液の産生が高まって血液が濃くなるし、乾燥のために脱水になりやすいので、今の状態で山に入ることは危険と判断されました。 ● 81歳男 胸部レントゲンで間質性の異常陰影がありCT検査を施行。肺活量はやや低く2.65リットル、一秒率は87.4%と正常。指で測る動脈血酸素飽和度はやや低く95%。 以上の所見から高所滞在時に運動能力の低下が起こりうるとの理由で参加中止が勧告されました。 後日、低酸素環境体験(3800m相当)で意識障害を起こしたことからも高所登山・トレッキングは禁止とすべきケースであり、事前に事なきを得たと言えます。 ● 63歳男 この検診では採血をして貧血の有無、肝臓、腎臓の機能を調べます。この受診者は貧血や糖尿病もなく腎臓の働きも正常でしたが、肝臓機能が障害されているという結果でした。 GOT 391,GPT 136, γGTP1510という数字です。いずれも正常は30-40程度です。心電図は正常でした。 急性の肝機能障害が改善するまでは参加を取りやめていただきました。 ● 74歳男 発作性心房細動 72歳まで仕事をしていたが健康診断はしばらく受けていなかった由です。海外登山はキリマンジャロ、キナバルなどあるが、高度障害の経験はなかった。50歳ころから走りはじめ、フルマラソン、10キロマラソン大会にも参加。現在、隔日に10キロ走っている。 安静時心電図は洞調律、高電位、左房負荷、r波増高不良の所見がある。運動負荷試験を開始したところ頻脈性の心房細動となりました(自覚症状なし)。心エコー図検査で心肥大なく、LVEF51%. 高所で頻脈性の心房細動が持続すれば心不全に陥る可能性があり中止勧告となりました。 | |||
| ★ (2)要注意、経過により中止することが望ましいと診断された例 |
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要注意、経過により中止することが望ましいと診断されたのは4例ありました。そのうち3例を紹介します。
● 71歳男 慢性腎臓病 血液検査で腎臓機能の指標となるクレアチニンが 3.0mg/dl(正常人は1.0以下、10.0を越えると人工透析を受けなければならない)と高値であり、貧血もみられました。 高所で体調を崩す惧れがある旨説明しましたが、大学時代の岳友2人と共にツアーに参加、無事帰国されたようです。 ● 72歳男 肺線維症 肺が何らかの原因で弾力性の低下をきたしている状態ですから、低酸素の環境では要注意あるいは禁止となります。 今回はたまたまツアーが催行されませんでしたが、今後も高所に行くことは勧められません。一度、低酸素環境施設を体験されるとよいかもしれません。 ● 78歳男 胸部XPにて右下肺野に異常陰影を認める。糖尿病で薬物治療中。慢性心房 細動があり抗不整脈薬を服薬中。 循環器の問題に関しては主治医の許可を得ているが、胸部所見についてはCT検査などで精査すべきと専門の呼吸器科に紹介したが実際は受診しなかったようだ。ツアーには参加したようで、幸いなことに何事も起こらず。 | |||
| ★ (3)検診の時点では異常所見があったが経過中改善して参加許可となった例 |
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● 61歳女 胸部XPに異常陰影ありましたが、CT検査を施行。感染症が疑われ抗菌薬投与を行ったところ改善。参加可能と判定され晴れて参加されました。
● 65歳男 胸部XPにて右中葉に腫瘤状陰影を認めたため、精査を行いつつ経過観察。6ヵ月後にこの異常陰影は消失し参加許可が出されたが、実際にはツアーには参加できなかった。 | |||
| ★ (4)検診では特別な異常を認めなかったが、高所で肺水腫を発症した例 |
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● 60歳台男性 検診ではまったく問題はありませんでしたが、高度4,400mで高地肺水腫を発症。ヘリコプターにてカトマンズまで緊急搬送されました。1週間カトマンズの病院で安静を保ったのちに帰国の許可が下り、無事帰国しました。 高地肺水腫発症には(通常の検診では確認できない)遺伝的な素因があるといわれています。この素因を判断する方法が必要かもしれません。 | |||
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ここに示しましたように、多くの貴重な例が積み重ねられ始めています。 日本登山医学会では、これらを十分に参考にして、高所トレッキングを安全に行える方法を考えています。 2008年02月 日本登山医学会登山者検診ネットワーク実行委員会 堀井昌子 |
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